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『ペンギン・ハイウェイ』石田監督舞台挨拶付き特別上映会レポート!2022/09/11
『ペンギン・ハイウェイ』を作ったからこそ、
「次はこういうものを描いてみたい」という思いが湧いてきた――新作『雨を告げる漂流団地』の公開を記念して、石田祐康監督の初長編作品『ペンギン・ハイウェイ』(2018)特別上映会が開催されました。
上映後には石田監督の舞台挨拶が行われ、『ペンギン・ハイウェイ』制作当時のお話を中心に、秘話をたっぷりお伺いしました。その様子を一部レポートでお届けします!
―新作の公開間近となった今、4年前の『ペンギン・ハイウェイ』を振り返ってみていかがですか?
石田監督:『ペンギン・ハイウェイ』は僕にとっては既にすごく懐かしい作品なんですけど、また同時にすごく大事な作品でもあります。4年前ですよね。2018年の確か8月17日公開だったのを覚えています。あの時もあの時でいっぱいいっぱいだったことを思い出します。長編デビュー作で、色々なことが初めてで。今回の『雨を告げる漂流団地』は航祐と夏芽という小学生の2人がいて、その子たちにとにかく気持ちを乗せて描いたんですけど……『ペンギン・ハイウェイ』でも主人公のアオヤマ君、そしてお姉さんというすごく素敵な2人にありったけの気持ちを込めて描きました。その時にあった細かい出来事とか技術的なことは4年経つとぼんやりしてきてはいるんですが、それでもとにかく「この2人にならついていきたいな」「この2人をずっと見ていたいな」っていう、その印象はいまだに残っています。
―『ペンギン・ハイウェイ』公開からの4年間、新作に向けてどのような準備をされていましたか?
石田監督:『ペンギン・ハイウェイ』を作り終わった後、しばらくはアオヤマ君とお姉さんが頭から離れなくて。空白の4年間のうち半年間かもしくはそれ以上はまだ『ペンギン・ハイウェイ』に意識があったんです。次の企画のことはとても考えられなくて。「まだこの2人のことを見ていたい」という、名残惜しいところがありました。ただ、2019年の頭ぐらいにそろそろ次の作品を考えようか、ということになって。観念して次の作品を考え始めました。そこからそんなに間をおかずに「団地が海を漂流している」っていう状況を思いつきまして。
『ペンギン・ハイウェイ』は“小学4年生の男の子”と“年上の大人の女性”、その2人の関係値を描いたので、次の作品ではちょっと違うものを見てみたかったんです。それでも“男女2人の物語”というのは変えたくないと思った時に、同級生が良いなと。前回は小学4年生だったので、今回はいわゆる思春期に差し掛かるぐらいの小学6年生の子を描いてみたいと思いました。『ペンギン・ハイウェイ』を作ったからこそ、「次はこういうものを描いてみたい」という思いが湧いてきましたね。皆さんご存知の通り、アオヤマ君はヘンテコな少年なのですが、原作を読んだときから、そのヘンテコさにすごく惹かれていました。思い立ったら純粋にまっすぐそれを突き詰めて考える潔さや精神性、かっこよさを描きながら感じていて。アオヤマ君がそういう少年だったからこそ、次はもう少し等身大の、小学生なりの不器用さ、遠回りの仕方、ちょっと素直になれない姿を描いてみたいと思った。その思いもやっぱり『ペンギン・ハイウェイ』を経たからこそのものです。
あとは、アオヤマ君とお姉さんに惹かれたのは当然のことながら、同時にその周辺の子どもたちにも惹かれまして。「この子たちかなんかかわいいな」って思いながら原作から拾いつつ、ときに「すみません」って言いつつちょっと自分なりに脚色したりして(笑)。「なんかいいな」って思う気持ちで、ありのままに描いてました。
例えばウチダ君。ちょっと気弱でオドオドしてるんですけど、アオヤマ君とのバランスとか立ち位置の塩梅によってクセになるような。それで声優さんが釘宮さんというのが決定打になって、さらにかわいくなって。
そしてハマモトさん。ハマモトさんにはアオヤマ君やお姉さんさんとは違った意味で、描きながら刺激されましたね。小学生らしからぬ頭脳とちょっとしたヘンテコさを持つアオヤマ君。普通だったら恥ずかしがっちゃうような、遠回りしちゃうようなところもストレートも言いに行っちゃうような子ですよね。一方でハマモトさんは、頭脳としてはアオヤマ君に負けず劣らずなんですけど、子どもなりに、そもそも人間としてまっとうに感じるであろう“照れ”とか“恥の感情”、もしくは“恋心”に対する等身大な感じ方やリアクションがあって。アオヤマ君とハマモトさんの共通するところとちょっと違うところっていうのは、2人が一緒にいるからこそ見えてくる面白さだなと感じてました。それはいろんなキャラクターがいるからこそ描けることだと。
なので、主人公2人が大事なのは当然なんですけど、次の作品ではその周辺のキャラクター込みで、ある種一つの群像劇としてその子たちの関わり合いの中で作られていく物語を、自分なりに体験してみたいっていう気持ちがありました。
―ペンギンでこだわった部分がおそらく新作にも引き継がれているのでは、と思うのですが、そういった部分はありますか?
石田監督:明らかに自分のターニングポイントは『ペンギン・ハイウェイ』です。長編初監督作品だったがゆえに、それまでやっていた短編作品とは自分の中でモードを変えて、長編に合った形で作らないといけないっていう思いのもと、各要素バランスをいろいろ考えて作っていて。作画や美術の長編に敵う密度感や空間の捉え方とか。新作でもご一緒させていただいてる阿部海太郎さんと音楽についていろいろ話し合ったり……。細かいところで言うと、16:9のアスペクト比。横長の画面で空間を表現できて、人物の対話を描けて良いな、とか。そして物語。2時間の尺の中での物語の見せ方や配分の仕方が初めてのことで、いろいろと大変ではありましたけど、そのときなりにやれることをやった。それが新作でも確実に土台になったっていうことを今思い返しても感じるので、『ペンギン・ハイウェイ』という作品にすごく感謝しています。
―最後に会場の皆さまにご挨拶をお願いします
公開から4年経った作品のイベントに来てくださる方っていうのは、きっと何かしらの思いがあって足を運んでいただいているんだと思います。本当に感謝の意を伝えたいです。『雨を告げる漂流団地』を作りながら改めて感じたんですが、やっぱり見てくださる方が存在しないと作品は作れないものだ、ということ。それは怖い部分でもあったんすけど、「だからこそ自分が生かされてる」っていうのをすごく感じながら作っていたので……改めて翻ってみると、今会場におられる方々、本当にありがとうございます。石田祐康監督の最新作、映画『雨を告げる漂流団地』は9月16日(金)よりNetflixにて全世界独占配信&日本全国ロードショー。是非ご覧ください!

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